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感覚を失って取り戻した話

私はアパレルの通販サイトを経営しています。それと並行してBRIGADEを結成しホームページやチラシの制作~販売促進~顧客化の対策を行ってきました(現在はホームページやチラシの制作は行っていません)。2021年4月時点でアパレル通販歴は14年、BRIGADE歴は6年です。これは私が仕事をするときに大切にしてきた感覚を失ってしまったことと、感覚を平曲をきっかけに取り戻した2019年の話です。

この記事は2021年7月4日に加筆修正を行いました

ある日違和感に気付く

春。取り扱い商品のコーディネートを検討しようとアイテムを並べてみると組み合わせが浮かばない。またある時は販売促進の企画が思いつかない、同じようなビジュアルのパターンになってしまう、そんなことがありました。ちょっとした疲れだろうと思っていたのですが一向に回復せず、そんな状態をメンバーに気付かれて「酒井さんどうしたの?」「この仕事、団長らしくないです」と言われたことで、このままではさすがにまずいと思うようになりました。

限界を振り切って失ったもの

この少し前、ひとりで背負い込んだ仕事がいくつかありました。自分の身体と能力の限界を振り切ることを選んだ仕事達ですがひと段落するとともに倒れてしまいました。私は新しい何かを得たいとき、自分の肉体的・精神的な限界を振り切るような仕事の取り組み方をします。それは今までそうすることで必ず得られるものがあったこと、そのあとは必ず体調が回復していたからです。ですが今回は何かが得られた感触はなく、体調も回復せず、温かい陽気の中で自分の身体がじわじわと溶けていくような感じがしていました。

メンバーからの提案

そんな時、メンバーが提案してくれたのは休息ではなく勉強でした。過去記事にも書きましたが、販売士2・3級の試験に挑戦しています(過去記事はこちら)。BRIGADEのサービスをリニューアルするにあたって、販売を体系的に学びなおす必要があったのも理由ですが、”ひとりの世界に没頭すること”が私にとって一番の薬になることを、メンバーはよく知っていたのだと思います。提案に乗って勉強をはじめました。試験勉強をしながら正直もう今までとは同じような仕事ができないかもしれないなと弱気になっていて、感覚が戻らないなら仕事をやめてしまおうかと真剣に考えていました。

戻らない感覚

私が仕事をするときに大切にしているのが感覚です。ラポールで音声を聞き、文字を読み取るとき、デザインを検討するときに相手の声や商材からイメージを感じ取る力のようなものです。この感覚が徐々に鈍くなって初夏にはまったく感じなくなっていました。他の方法でカバーしたりメンバーのサポートを受けながらかろうじて仕事を行っていましたが、感覚を失ってしまったんだと思うとこれから先どうすればいいのかと悩む日々が続きました。

先生との出会い

夏。以前から興味のあった平曲(平家物語を語り琵琶で伴奏するもの)を学ぶ機会に恵まれました。和楽器に触れたことも声を出したこともありませんでしたが、稽古場で先生のお人柄に触れ、声と演奏に心を奪われてその場で習うことを決めました。仕事の合間を縫って通う稽古が、いつのまにか稽古中心の仕事体制になってしまうほど夢中になっている自分がいました。メンバーに迷惑をかける心苦しさや自分に感じる不甲斐なさ。どこか遠くに逃げたい、そんな気持ちだったのだと思います。

私、いま海の中にいる

何回目かの稽古の時、先生のお手本を聞いているうちに突然海の中にいる感覚に陥りました。夕暮れ時の海。寒い、でも海の中は暖かい。右手の沖には扇を掲げた小舟。左手には馬に乗った若武者が目を閉じて祈りを捧げている。遠くで先生の弾く音が聞こえる。若武者が目を開いて弓を引く。私も矢の向く方を見る。矢を放つ。 「私、いま海の中にいる」 ここでハッと意識が稽古場に戻りました。先生の演奏を通して文字の先にある世界を想像できたこと、涙が出るほど嬉しくて叫びそうなくらいでした。失ったと思った感覚が戻ったのが分かったからです。

感覚、戻る。

この日を境に感覚が戻りました。ですが戻った感覚は以前のものと少し違っています。いまだに自分でも説明がうまくできないのですが、なにかの幅が広がった感じがしています。なにかが何なのかもまだよくわかりませんがメンバーに「団長前よりヤバくなったね」と言われるので(ポジティブな解釈で)ほっとしています。

この感覚がこれからどうなっていくのかわかりませんが、失ってしまうような肉体的・精神的に無謀なチャレンジはもうしないことと、皆様のお役に立てるように磨き続けることを心に決めています。




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